FIP制度とは?FIT(固定買取)制度との違いやメリット・デメリットについて解説
最終更新日:2025.08.18 お役立ち情報

2022年4月から、再生可能エネルギーの新たな支援制度としてFIP制度がスタートしました。従来のFIT制度(固定価格買取制度)とは異なり、市場価格に連動して買取価格が変動するこの制度は、太陽光発電のあり方を大きく変える可能性があります。
「FIP制度って結局何?」「FIT制度とどう違うの?」「自分にはどんな影響があるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、FIP制度の仕組みやFIT制度との違いをわかりやすく解説します。さらに、FIP制度のメリット・デメリットや、導入を成功させるためのポイントについても詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次
FIP制度とは?わかりやすく解説

FIP制度は「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略称で、再生可能エネルギーで発電した電気を、卸電力市場の価格に連動した形で買い取る制度です。
FIT制度が国が定めた固定価格で買い取るのに対し、FIP制度は市場価格+プレミアム(補助額)で買い取るのが大きな特徴です。市場の状況に応じて価格が変動するため、発電事業者はより市場を意識した発電・売電計画を立てる必要があります。
国の目的は電力の自立
国は、FIP制度を通じて再生可能エネルギーの自立を目指しています。
火力発電などの主力電源は、卸電力取引市場で取引されていて、常に買取価格が変わります。また、FIT制度のように補助収入や支援制度はありません。
一方、再生可能エネルギー由来の発電設備は、固定買取価格のFIT制度を通じて稼働および取引されていて、他の発電設備より優遇されています。FIT制度を支えるための予算は国民の電気料金から捻出されていて、自立した発電設備とはいえない状況です。
これから主力電源として運用していくには、市場価格をベースとした取引でなければいけません。そこで国はFIT制度からの自立を促すため、FIP制度を創設しました。
売電収入に上乗せされるプレミアム価格
FIP制度への移行によって得られる売電収入は、市場価格によって定められた収益にプレミアム価格というものが上乗せされています。
FIP制度の買取価格=市場価格+プレミアム価格
プレミアム価格は、FIP制度における補助収入のような役割を持っています。そのため、FIP制度の買取価格は、市場取引の買取価格より高い価格です。
なおプレミアム価格は市場価格に連動しているため、一定ではありません。プレミアム価格の詳細については、後ほど詳しく解説します。
発電した電気はさまざまな方法で売電可能
FIP制度では、再生可能エネルギーで発電した電気をさまざまな方法で売電することが可能です。
1つは電力の卸市場へ参入、もう1つは小売電気事業者との相対取引という方法です。
市場取引を行うには、JEPX(日本卸電力取引所)で提供されている市場へ参入する必要があります。JEPXは、日本で唯一の電力取引市場で、電気の売却・購入に関する取引が日々交わされています。
一方、相対取引は、大手電力会社や新電力など電力の契約やサービスを提供している事業者と個別に取引を行うのが特徴です。
柔軟に取引・売電を行っていきたい方にとっては、メリットの多い仕組みといえます。
FIT制度との主な違い
FIP制度とFIT制度は、どちらも再生可能エネルギーを普及させるための制度ですが、その仕組みには大きな違いがあります。特に買取価格と発電計画の責務が異なります。以下の表で主な違いを確認してみましょう。
項目 | FIP制度(フィード・イン・プレミアム) | FIT制度(固定価格買取制度) |
制度の目的 | 再生可能エネルギーの自立化 | 再生可能エネルギーの導入拡大 |
買取価格 | 変動制(市場価格+プレミアム) | 固定制(国が定めた単価) |
買取義務者 | 小売電気事業者など(※義務はない) | 小売電気事業者など(※国が買取を義務付け) |
発電計画の責務(バランシング) | あり ・計画値と実績値の差にペナルティ(インバランス料金)が発生 | 免除 ・FIT特例制度により実質的に免除 |
蓄電池の重要性 | 高い ・価値が高いときに売電したり、発電量を調整したりするために重要 | 比較的低い ・自家消費率を高める目的では重要 |
このように、FIP制度はより市場原理に近く、事業者に工夫が求められる制度です。その分、蓄電池などを活用して賢く運用すれば、FIT制度以上の収益を得られる可能性があります。
FIP制度で重要な収益の内訳

FIP制度で得られる収益には、市場収入とプレミアム価格が含まれています。また、バランシングコストという費用が発生するため、FIT制度より複雑な内容となっています。今後、FIP制度へ移行するもしくは移行しなければいけない場合は、収益の内訳について確認しておくのも大切です。
それでは、FIP制度の収益に関する内訳や注意点を1つずつ確認していきましょう。
市場収入
FIP制度における市場収入とは、太陽光発電を含む再生可能エネルギーで発電した電気を売電した際に得られる収入のことです。
市場収入は2種類に分かれていて、FIT制度の固定買取価格と異なる仕組みです。
以下に2種類の収入について紹介します。
売電収入 | 太陽光発電で発電した電気をJEPXや相対取引を通じて売却した際の収入 |
環境価値の売却によって得た収入 | 太陽光発電で発電した電気に付帯される環境価値を非化石価値取引市場で売却した際に得られる収入 |
太陽光発電を含む再生可能エネルギーは、発電の過程でCO2の排出量が抑えられています。そのため、CO2削減という環境価値が生まれます。
企業や個人が環境価値を購入した場合は、CO2削減へ貢献したことをアピールできますし、間接的にCO2削減を行ったとみなされます。
発電事業者側は環境価値を販売できるため、売電とおなじく収益を得られるのが強みです。
プレミアム価格
市場価格に上乗せされるプレミアム価格は、基準価格(FIP価格)と参照価格という2つの価格から算出されます。
プレミアム単価 = 基準価格(FIP価格) - 参照価格
基準価格(FIP価格)とは、再生可能エネルギー事業が効率的に運営された場合に通常必要となる費用を基に国が設定する価格です。FIT制度の買取価格のように、認定を受けた年度によって価格が決まります。
●参考:2024年度の基準価格(FIP価格)
太陽光(10kW以上50kW未満の地上設置など):9.2円/kWh(税抜)
参照価格とは、市場取引などによって発電事業者が得られると期待される収入額です。卸電力市場の価格に連動して変動します。
市場価格が高騰して参照価格が上がるとプレミアム単価は下がり、逆に市場価格が下落して参照価格が下がるとプレミアム単価は上がります。この仕組みによって、事業収益が安定しやすくなっています。
※基準価格(FIP価格)は、設備の種類や規模、年度によって異なります。最新の情報は経済産業省資源エネルギー庁のウェブサイトをご確認ください。
バランシングコスト
バランシングコストは、支出に該当する項目です。
FIP制度における収支は、「(市場収入+プレミアム価格)―バランシングコスト」という計算式で定められます。
中でもバランシングコストとは、事前に提出した発電計画に沿って発電できなかった場合のペナルティ料金、ペナルティ料金の削減に必要な運用コストのことです。
通常、さまざまな発電設備で売電を行う際、電力の需要と供給バランスを乱さないよう、事前に計画値(想定される発電量)を提出しなければいけません。
また、実測値(実際の発電量)と計画値と異なる場合は、インバランス料金というペナルティ料金を支払うという仕組みです。
このような仕組みがFIP制度にも導入されているため、常にバランシングコストを考慮しながら運用していくことも求められています。電力事業における自立という点でFIP制度は、より市場取引のルールに近い形式です。
バランシングコストを抑えるには、電力の需給調整を担うアグリゲーターへ発電事業のサポートを行ってもらうなどの対策が重要です。
FIP制度の3つのメリット

FIP制度は複雑な部分もありますが、事業者にとって大きなメリットも存在します。ここでは、主な3つのメリットについて解説します。
メリット①:市場価格が高い時に売電し、収益を最大化できる
FIP制度の最大のメリットは、電力市場の価格が高い時間帯を狙って売電することで、収益を最大化できる可能性がある点です。
例えば、電力需要が高まる昼間や夕方の時間帯に蓄電池から放電・売電するといった戦略的な運用が可能になります。FIT制度の固定価格とは異なり、事業者の工夫次第で収益性を高められるのが魅力です。
メリット②:環境価値をアピールし、企業価値向上につなげられる
FIP制度では、発電した電気が持つ「CO2を排出しない」という環境価値(非化石価値)を、売電とは別に取引できます。近年、ESG投資や脱炭素経営への関心が高まる中、この環境価値は企業にとって大きなアピールポイントとなります。自社の環境貢献度を具体的に示せるため、企業価値の向上やブランドイメージの強化に直接つなげることが可能です。
メリット③:電力市場への統合で新たなビジネスチャンスが生まれる
FIP制度は、再生可能エネルギーを電力市場に統合し、自立した電源とすることを目的としています。これにより、発電事業者は単なる電気の売り手ではなく、電力市場に参加するプレイヤーとしての意識が求められます。需給調整やアグリゲーションビジネスなど、これまでにはなかった新たなビジネスチャンスが生まれる可能性も秘めており、事業の多角化も視野に入れることができます。
FIP制度のデメリット

一方で、FIP制度には注意すべきデメリットも存在します。
最も大きなデメリットは、市場価格の変動リスクです。電力価格が想定より低迷した場合、収益が不安定になる可能性があります。
また、計画値同時同量の責務(バランシングコスト)も大きな負担です。発電計画と実績にズレが生じるとペナルティ料金が発生するため、高精度な発電量予測や、需給調整を代行するアグリゲーターとの契約が必要になります。
さらに、市場取引や計画提出など、FIT制度に比べて事務的な負担が増加する点もデメリットと言えるでしょう。これらのリスクを管理するためには、専門的な知識やノウハウが不可欠です。
FIP制度の導入事例
FIP制度は、工夫次第でさまざまな活用が可能です。ここでは、国内の導入事例を2つご紹介します。
国内事例紹介①:東芝ネクストクラフトベルケ

データを活用した高度な予測や最適な取引、制御によって、発電事業者は収益の安定化を図り、小売事業者や需要家には安定した再生エネ電源を届けることができます。
また、アグリゲーターが参照価格で買取、インバランスリスクを引き受けることで、FIT制度に近い仕組みを疑似的に構築することも可能となりました。
国内事例紹介②:FIT特定卸供給を利用していた事業者

これまでFIT特定卸供給によって、発電事業者からグループ内の小売電気事業者へ電力を供給していました。しかし、市場価格に連動した調達となるため、価格が高騰すると調達費用が増加していました。
そこでFIP制度に移行し、固定価格での相対契約を結ぶことで、市場価格に左右されない調達が可能となり、小売電気事業者にとっての価格変動リスクヘッジにつながります。一方で、発電事業者にとっては固定価格取引に加えてプレミアム収入が見込めるため、事業の見通しを立てやすくなりました。
まとめ:FIP制度の理解を深め、太陽光発電の価値を最大化しよう
この記事では、FIP制度の概要からFIT制度との違い、メリット・デメリットまでをわかりやすく解説しました。
FIP制度は、市場価格に連動して買取価格が変動し、発電計画の責務が伴うなど、FIT制度に比べて複雑な制度です。しかし、市場の動きを読んで戦略的に運用することで、収益を最大化できる大きな可能性があります。
特に、FIP制度を成功させる鍵となるのが蓄電池の活用です。発電した電気を貯めておくことで、価格変動リスクやインバランスリスクを抑え、最も収益性の高いタイミングで売電することが可能になります。
エコでんちでは、環境省認定資格である「うちエコ診断士」を持つ専門アドバイザーが、お客様の状況に最適な太陽光発電・蓄電池システムをご提案します。FIP制度に関するご相談も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。



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